国民年金法施行令等の一部改正
○国民年金法施行令等の一部を改正する政令(令和2年政令第101号)
○年金生活者支援給付金の支給に関する法律施行令の一部を改正する政令(令和2年政令第107号)
★概要のみ紹介
[1] 国民年金法施行令等の一部を改正する政令関係
1 国民年金法施行令の一部改正関係
令和2年度における国民年金の保険料の追納に関する加算率を改定することとされた。
2 国民年金法による改定率の改定等に関する政令の一部改正関係
令和2年度における国民年金法に規定する改定率及び保険料改定率、厚生年金保険法に規定する再評価率及び国民年金法等の一部を改正する法律に規定する従前額改定率の改定などを行うこととされた。
3 その他
「国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令」、「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律施行令」などについて、必要な改正を行うほか、関係政令について所要の規定の整備等を行うこととされた。
〔解説①〕令和2年度の国民年金・厚生年金保険等の年金額
① 国民年金の改定率の改定
令和2年度の改定の基礎となる物価変動率は0.5%(1.005)、名目手取り賃金変動率は0.3%(1.003)となった。また、調整率は▲0.1%(0.999)となった。
調整期間における改定率の改定の基準は、本来は、新規裁定者については「名目手取り賃金変動率×調整率×前年度の特別調整率」、既裁定者については「物価変動率×調整率×前年度の基準年度以後特別調整率」であるが、それぞれについて一定の例外規定が設けられている。
たとえば、名目手取り賃金変動率、物価変動率がともにプラスで、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合には、新規裁定者・既裁定者ともに「名目手取り賃金変動率」を用いて改定することが規定されている。
令和2年度においては、上記の例外により新規裁定者・既裁定者ともに「名目手取り賃金変動率」を用い、その伸びが調整率を用いて抑制されることになった(なお、令和2年度の改定においては未調整分なし)。そのため、改定の基準は、「1.002(名目手取り賃金変動率〔1.003〕×調整率〔0.999〕)」とされた。
このように、改定の基準が「1.002」とされたことから、令和2年度の改定率は、新規裁定者・既裁定者ともに、「1.001*」とされた。
*1.001≒前年度の改定率(0.999)×「1.002」
※本来水準の年金額は、次のとおりとなる(主要なもの)。
・基礎年金の満額――――――→780,900円×改定率1.001≒781,700円
・子の加算額――――――――→224,700円×改定率1.001≒224,900円
・子の加算額(3人目以降)―→ 74,900円×改定率1.001≒ 75,000円
② 厚生年金保険の再評価率の改定
再評価率の改定についても、基本的には、改定率の改定と同じ仕組みとなるため、令和2年度においては、新規裁定者・既裁定者とも、原則として、改定の基準は、「1.002」となる。
③ 従前額改定率
厚生年金保険の報酬比例部分(平成12年改正前の給付水準を保障する従前額保障の場合)の計算式で用いる「従前額改定率」は、令和2年度においては、「昭和13年4月1日以前に生まれた者については1.002、昭和13年4月2日以後に生まれた者については1.000」とされた。
〔解説②〕令和2年度及び令和3年度の国民年金の保険料額
① 令和2年度における保険料改定率は、「0.973」とされた。したがって、平成32年度における国民年金の保険料額は、実際には、17,000円×保険料改定率(0.973)→所定の端数処理→「16,540円」となる。
② 令和3年度における保険料改定率は、「0.977」とされた。したがって、平成31年度における国民年金の保険料額は、実際には、17,000円×保険料改定率(0.977)→所定の端数処理→「16,610円」となる。
注.平成26年度から、2年前納制が採用されることになったことから、毎年度、2年度分の保険料改定率が定められることになった。
〔解説③〕令和2年度の国民年金の脱退一時金の額
保険料額の引き上げに応じた自動改定の規定により、令和2年度における国民年金の脱退一時金の額は、政令により、次の金額とされた。
<令和2年度の国民年金の脱退一時金の額>
対象月数 6月以上12月未満;49,620円
12月以上18月未満;99,240円
18月以上24月未満;148,860円
24月以上30月未満;198,480円
30月以上36月未満;248,100円
36月以上 ;297,720円
〈補足〉改定の考え方は、「平成17年度の額×(16,540円÷13,580円)」。これを基準として、政令で定められた。
〔解説④〕令和2年度の厚生年金保険の在職老齢年金に係る支給停止調整額等
① 60歳台後半・70歳以上の在職老齢年金の計算に用いる支給停止調整額は、「47万円」とされた(改定なし)。
② 60歳台前半の在職老齢年金の計算に用いる支給停止調整変更額は、「47万円」とされた(改定なし)。また、同計算に用いる支給停止調整開始額は、「28万円」とされた(改定なし)。
<確認> 60歳台後半・70歳以上の在職老齢年金の計算式(1月当たりの支給停止額)
【前提】・基本月額:加給年金額などを除いた老齢厚生年金の本体の額÷12
・総報酬月額相当額:その月の標準報酬月額*1+その月以前1年間の標準賞与額*2の合計÷12
*1 70歳以上の者の場合には、標準報酬月額に相当する額とする。
*2 70歳以上の者の場合には、標準賞与額及び標準賞与額に相当する額とする。
総報酬月額相当額と基本月額を合計した金額が47万円(支給停止調整額)を超える場合には、1月当たり、次の金額が支給停止される。
→(総報酬月額相当額+基本月額-47万円)÷2
〈補足〉年金支給月額がマイナスになる場合は、年金は全額支給停止、加給年金額も支給停止。
<確認> 60歳台前半の在職老齢年金の計算式(1月当たりの支給停止額)
【前提】・基本月額:加給年金額を除いた60歳台前半の老齢厚生年金の本体の額÷12
・総報酬月額相当額:その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の合計÷12
総報酬月額相当額と基本月額を合計した金額が28万円(支給停止調整開始額)を超える場合には、1月当たり、次の金額が支給停止される。
・基本月額≦28万円、かつ、総報酬月額相当額≦47万円(支給停止調整変更額)の場合
→(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2
・基本月額>28万円、かつ、総報酬月額相当額≦47万円の場合
→総報酬月額相当額÷2
・基本月額≦28万円、かつ、総報酬月額相当額>47万円の場合
→(47万円+基本月額-28万円)÷2+(総報酬月額相当額-47万円)
・基本月額>28万円、かつ、総報酬月額相当額>47万円の場合
→47万円÷2+(総報酬月額相当額-47万円)
〈補足〉年金支給月額がマイナスになる場合は、年金は全額支給停止、加給年金額も支給停止。
[2] 年金生活者支援給付金の支給に関する法律施行令の一部を改正する政令関係
令和2年度における年金生活者支援給付金の支給に関する法律による年金生活者支援給付金の「給付基準額」を改定することとされた。
〔解説〕令和2年度の年金生活者支援給付金の「給付基準額」
給付基準額の法定の額は「5,000円」である。この給付基準額は、毎年度、前年の物価変動率を基準として改定されることになっている。その結果、令和2年度の給付基準額は、「5,030円*」とされた。
*5,000円×前年の物価変動率(1.005)→所定の端数処理→「5,030円」
これらの政令は、令和2年4月1日から施行